『いっぽん桜』 322P 500円
(山本一力 新潮文庫)
いっぽん桜
萩ゆれて
そこに、すいかずら
芒種のあさがお
ISBN 4−10−121341−0
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◆ 内容と感想
山本一力さんは時代小説作家です。
『あかね空』で直木賞を受賞してからも一貫して市井もの、
人情ものと呼ばれる小説を書き続けています。
『いっぽん桜』には花の名を冠した短編が四つ収められています。
それぞれ、生きることの厳しさを描きつつ、ほっとするものです。
ひとつだけ選ぶとしたら「芒種のあさがお」。
男まさりの女の子、おなつは、富岡八幡宮の祭りに出かけて、
ひとりの男と出会います。
そこから始まる物語は、決して明るいことばかりではありません。
読みながら「いるよなあ、こういう人」などとため息をついたりも
して。
けれど、終盤の展開を見て「そう来たか」と思いました。
人と人のつながりとは深いものだなあ、とバスの中でしみじみと
……ちょっとまぶたが熱くなりましたよ。
真夏の陽の光の下で、まっすぐに咲き誇るあさがお。
それが目に見えるような気がします。
あさがおなんて、ずいぶん見てもいないのに。
仕事に対する誇り、人に対する礼儀、想いを伝えるときの恥じらい。
それが世間にあふれていたことを思い出すために、
ときどき時代小説を読むのかもしれないなあ。
そんなことをつい考えてしまう一冊です。
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◆ 今日の「学び」
花がなければ生きていけない。
そこまでの気持ちはありませんが、ふと花を眺めて何かを想う−−
これくらいのゆとりは持ちたいものです。
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